まとめ切れない。
平田オリザは、「青年団」を主宰する演出家、劇作家。
2009年10月に鳩山内閣で内閣官房参与となって以来、
ほんとにいろんな批判があると思う。
けっこう的を得たものから、
虚実ないまぜになったものまで。
つまりは目立ちすぎたんだな、と思う。
「平田オリザ」がアイコン化している。
まるで何かの象徴のように崇拝され、攻撃され、
焦点を結ばない虚像だけが膨張して、
批判のつぶてに打たれるだけのサンドバッグになっている。
高校の頃から平田オリザのファンな俺としては、
それは「平田オリザ」の虚像であって、
ほんとうの平田オリザではないと思う。
思うけれど、
「こんな批判なんて整理する価値もない」
と思うけれど、
それでも、直視しなくてはいけないものがある気がする。
たぶん、俺が目を背けたいのは、
俺への批判だから。
平田オリザへの批判は、主に2つに分けられる。
1)いわゆる「劇場法」への提言について
2)俗に言う「日本解体法案」について
ちなみに、平田は、
鳩山内閣では主に文化行政を担当し、
菅内閣では、国際交流を担当している。
上のうち、1)は鳩山内閣時代のもので、
2)は菅内閣時代の話だ。
1)いわゆる「劇場法」への提言について
これは、演劇関係者の事実誤認によるものが大きいと思われるが、
朝日新聞大阪本社版2010年3月19日付夕刊の、「劇場法」に関する平田の記事を読んで、
「劇団への助成をなくして、すべてを劇場へと振り向ける」のだという誤解が生じ、
様々な批判が飛んだ。
平田は後日、
劇団への助成はそのままで、劇場への助成を増やしていく、という意図だったと釈明する。
繰り返しになりますが、劇団関係者にご理解いただきたいのは、一部報道されているように、「劇団への助成を減らして、劇場への助成を増やす」といったパイの取り合いを目指しているのではないという点です。ただし、全体で見れば、演劇制作の主体は、すでに劇団から劇場に移りつつあり、この流れは世界の演劇の潮流からいっても、間違った方向ではないと思います。このことについての私の発言が、誤解を呼ぶ元になっているとすれば、説明不足をお詫びするしかありません。
(http://www.seinendan.org/jpn/oriza/msg/index2.html?)
と釈明しているが、
説明不足なのは否めないし、
「平田オリザが抱える青年団は劇場付きの劇団だから、
劇場をもってない劇団のことなんてどうでもいいんだ」
と思われても仕方がない。
個人的には、
平田オリザが言ってるのはかなり的を得ていると思う。
たとえ劇団への助成が減ったとしても、
劇場への助成が増えさえすればそれでいいと思う。
劇場を、単なる「ハコ」ではなくて、血の通った「場所」にしなくてはいけない。
だって例えば、東京芸術劇場に野田秀樹が来て面白くなったでしょ?
でも、平田が提案していることは、
自分(青年団)に都合が良すぎる。
こういうことはもっと中立的な人間が提言すべきだった。
もちろん、そんな人間がいないから、
平田が矢面に立たされているのだけれど。
2)俗に言う「日本解体法案」について
これは、あんまり深く説明するのはめんどくさいけど、
外国人参政権、夫婦別姓、人権擁護委員会、とかそういう辺を右翼の人が、
「日本解体法案」とかって呼んでいるらしい。
その中でも、平田オリザが関係するのは、外国人参政権だ。
講演で、在日韓国・朝鮮人への参政権付与について言及するなど、
外国人参政権に賛成の立場を取っている。
たしかに、「対話」が重要だという平田の理念からして、
国民でなくても住民なら政治的に意見を言えて当然だ、
というのは自然な考えだと思う。
でも、またちょっと問題発言があったりする。
それは、2010年2月29日のこと、
「友愛公共フォーラム発会記念シンポジウム」の席上で、
「ずっと10月以来関わってきて、鳩山さんとも話をしているのは、やはり21世紀っていうのは、近代国家をどういう風に解体していくかっていう百年になる。しかし、政治家は国家を扱っているわけですから、国家を解体するなんてことは、公(おおやけ)にはなかなか言えないわけで、それを選挙に負けない範囲で、どういう風に表現していくのかっていうことが、僕の立場」「国にやれることは限られるかもしれませんっていう、実はすごく大きな転換を、すごく巧妙に、(演説に)入れているつもりなので、先々、研究対象として、何が変わったのかということを、考えていただきたい」等の発言をした。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E7%94%B0%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B6)
という風に、右翼が使う「国家」「解体」というキーフレーズを使ってしまっている。
(出所が週刊誌だから、脚色されている可能性はある)
これは怪しまれても仕方がない。
まあ、外国人参政権賛成なのは変わらないし、
どうあがいても右翼受けが悪いのは変わらないけど。
でもそれにしても、もうちょっと味方をつくる言い方もあったんじゃないだろうか。
近代国家の解体、というのは、
「日本人」というアイデンティティに閉じこもる/閉じ込める
のではなくて、もっとグローバルな世界に対応した、
多文化共生な社会に開いていかなくてはいけない、
といったニュアンスだろうか。
ここで切り取られた短い言葉からはコンテクストが読めないけれど。
という感じで、
演劇関係者に反感を買い、
右翼を敵に回し、
というのが今の平田オリザだ。
なんか見てて切なくなる。
こんなぼろぼろになるまで、なぜ闘わなくてはいけないのか。
できるなら、平田オリザには演出家と劇作家だけしていてほしい。
そんなことを思いながら、俺もまた、
平田のインタビューから誤解を招きそうな部分だけを抜き取ってみて、
まとまらないまとめを終わりにしたい。
演劇はこういう、コピペの文化に、
つぎはぎと分断に満ちた世界に、
どう生きていくのかなあ、なんて考えながら。
興味あれば全部読んでね。
http://www.wonderlands.jp/interview/010hirata/
…要するに、劇団はそれ単体では原理的に金にならないから、若い人たちをだまさない限り絶対に存続しない。いつもずーっと文化大革命しているようなもんだから。「毛沢東だ!」って言って若者をついてこさせないといけない。
少なくともぼくの活動の中に新しいところがあったとすれば、「だましているんだ」ということを、はっきり言ったことでしょう。それが革新的だったと思うんです。それまでは、だましてないことにしていたし、主宰者も騙していないと思い込んでいた。でも、劇団というのは、若者をだましてるんだと。だましていることを前提にして、お互いに納得ずくで契約を結ばせようというところまではきた。
(http://www.wonderlands.jp/interview/010hirata/5/)
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