ゼロから始める都市型狩猟採集生活 坂口 恭平 太田出版 2010-08-04 売り上げランキング : 906 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
タイに行く前から、ずっと読まなければと思っていた本。
俗な紹介をするなら、「路上生活の仕方」。
だけど、ここに書いてあるのはもっと深いことだと思う。
実際、この本の筆者も、
ぼくが繰り返し言う都市型狩猟採集生活というのは、ただの路上生活のことではない。最終的な目標は、自分の頭で考え、独自の生活、仕事を作り出すことにある。
既存の生き方は一度横においておこう。法律で認められていることすら一度疑って考えてみる必要がある。
と書いている。
そう、この本は、都市の持っている別のレイヤーを見るための本だ。
路上生活というのは、その一例に過ぎない。
都市にはもっと多様な、多くの人には見えない、レイヤーがある。
そもそも誰のものでもないはずの水や土地が、
管理されてお金を払わなければ使えないという現実に疑問を感じ、
ゴミは毎日新しく実る果物、
水道は涸れることのない泉、
という風に<都市の幸>を捉えるその視点に、
俺はとても共感する。
何を言っているんだ、
都市の幸なんてない。
水は山に育まれ、
食べ物は農家が育てる。
俺たちは農村と自然に生かされている。
というのが、
学部までの俺の模範解答。
でも、それは模範解答であって、
俺の現実じゃない。
都市から農村は見えない。
見えるようにすることと、
見えない視点にあえて立つことと。
俺は後者を選んだから、いまの場所にいる。
都市には都市でいろんな良いところも悪いところもあるし、
そのためには、都市の視点に立たないと見えないことがある。
いろんなことが逆に見えなくなるけど。
模範解答から遠ざからないといけない。
この本には、そうやって俺が探している、
「都市の視点」のひとつのモデルケースが書いてある。
もちろん、誰もが「都市の達人」になれるわけじゃない。
それを分かりつつ、路上生活の仕方を軽やかに説明する文体は、
なんかちょっとマッチョな感じがしてやだけど。
ところどころ違和感を感じつつも、
でも面白い本だった。
↓この部分が心に残った。
きみは二十一世紀の狩猟採集民となる。都市を駆けぬける遊牧民となる。
社会システムは、いくら変化させてもまた同じ循環を繰り返し、人間を苦しめつづけるだろう。それよりもまず、きみの精神、視点、創造性を変革させるのだ。そこにこそ、希望が隠されている。
<都市の幸>で暮らすことは、きみが起こすことのできる、唯一の革命なのだ。