去年の12月末、タイの与党民主党の下院議員たちがプレアヴィヒア寺院でカンボジア当局に逮捕されたことだった。
1月下旬に裁判の判決が出て、
7人のうち5人は不法入国罪で執行猶予がつきタイに帰国したが、
右翼系団体「タイ愛国者ネットワーク」の2人はスパイ罪で懲役8年、6年の判決が出て、現在も拘留されている。
こうしたできごとで互いに反感が高まっている中、
タイがプレアヴィヒア寺院周辺で軍事演習を行なうという予定も報道され、
さらに緊張が高まる。
そして、2月4日、戦闘が始まる。
どちらが先に手を出したのかは定かではない。
お互い、相手の方が先だった、と主張し相手を非難する。
その後も断続的に戦闘は続き、
互いの死者は10人ほどになっている。
カンボジアは、
首相が「これは単なる軍事的衝突ではない、戦争だ」と言い、
国連安全保障理事会の介入を望んでいる。
一方、タイは二国間で解決すべきだ、と言っている。
CNNのインタビューにタイの外相は、カンボジアとは仲良くやれるから、そんな大したことないし国際社会の手はいらないよ、的なことを言っている。
この背景には、国力の違いと、国際社会の旗色がある。
タイにとっては、普通に外交交渉をすれば、強い経済力でカンボジアよりも優位に立てる。
だから、自国の優位性を活かすために二国間で、国際社会の横槍を入れずに交渉したい。
しかし、カンボジアとしては、それは困る。
そして、1962年の国際司法裁判所判例などがあるため、
国際社会はカンボジアを支持する可能性が高い。
だから、国連に介入してほしい。
そして、おとつい国連安全保障理事会を間に挟んだ協議があり、
両者の言い分を聞いた上で声明が出された。
"Members of the Security Council further urged the parties to establish a permanent ceasefire, and implement it fully and resolve the situation peacefully through effective dialogue."
(The nation: Authorities should stop stirring the pot needlessly)
しかしこれは玉虫色な文言で、
タイもカンボジアも、自分の都合いいように解釈して
「勝った」と言っている。
(参考:Bangkok Post: Split decision, with both claiming victory)
カンボジアが望むように「介入する」とは言わず、
タイが望む「二国間協議」には言及していない。
ただ、闘うのをやめて話し合いで解決しよう、と言ってるだけだ。
どういう風に話し合えばいいか明言は避けている。
その「闘うのをやめて」という部分にしても、
声明が出された数時間後にまた戦闘が起こり、声明の無力さを露呈した。
タイ側の専門家の中には、
カンボジアは事態を悪化させることで国連のPKO派遣を狙っているのではないか、
という見方もある。
(参考:The Nation: Thailand, Cambodia set to face off at UN)
確かにカンボジアは、「これは戦争だ!」と事態を煽り、
「タイ側にやられてるんです!助けて!」とアピールし、
国際社会の共感と支援を得ようという作戦のようにも見える。
タイ側が国内の混乱で外交戦略を欠くのと逆に、
カンボジアにはそういう、一貫した強かさがある気もする。
外交戦略なんて、外から見て分かるものでもないけど。
ひとまず交渉の舞台は、
22日に開かれるASEANの会合の場に移ることになる。
その、タイの国内の混乱、のことを次は書くつもりだったけど、
ちょっと先延ばしになりそう。。ごめん。
(続く)
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