2010年4月22日木曜日

平野 秀樹「奪われる日本の森―外資が水資源を狙っている」

奪われる日本の森―外資が水資源を狙っている奪われる日本の森―外資が水資源を狙っている

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俺らの知らんうちに外資が森を買っていて、
油断していると森も水も奪われてしまうんじゃないか、
という内容の本。


日本の森は、
その6割で国土調査が終わっていない。
森はここまでは誰のものでここからは誰のものだ、
という所有関係がはっきりしていない。

その上、林地市場は不透明だ。
農地は農地法によって監視されているし、
宅地の売買は衆目が集まる。
しかし、林地の場合は、
周囲に知られたくない売り手と、世間に気付かれたくない買い手が、
山奥でこっそり売買を成立させてしまう。

こっそり森が、奪われていっている。
というのがこの本の主旨だ。
でも、こっそりだから証拠はあんまりない。という。
だからあんまり信憑性はない。
完全に嘘ではないにしても、
どこか筆者の妄想であるように思える。
陰謀論ぽい。


けれども、
森が奪われているというのが妄想だとしても、
この本が指摘する日本の法制度上の問題点は興味深い。

ひとつは、外資の買収に対する規制が弱いこと。
ふたつめは、土地所有権が強すぎること。
そしてもうひとつは、地下水利用のルールがないこと。




1点目。
外資の買収に対する規制としては、
航空法、電波法などの個別法に加えて、
「外国為替及び外国貿易法」(外為法)という法律が存在する。
Wikipediaによると、

外為法にもとづき、以下のような外資規制が設けられている。

・対内直接投資に関する条約等がない国(アフリカ・中央アジアの一部)からの投資
・上記以外の国からの場合は、航空機、武器、原子力、宇宙開発、エネルギー、通信、放送、鉄道、旅客運送、石油、皮革等の産業に対する投資

上記に該当する投資については財務大臣及び主務大臣への事前届出が必要となる。審査の結果、投資内容の変更又は中止の勧告を実施する場合がある。
上記に該当しない投資についても、15日以内に財務大臣及び主務大臣に報告しなければならない。
Wikipedia - 外資規制

ということでわかりにくいけど、つまり、

外為法で指定されたもの → 事前届け出で許可が必要
外為法で指定されていないもの → 許可不要で、事後報告でいい

ということらしい。 
不動産は、後者に当たる。

規制緩和だ規制緩和だと声を荒げている欧米諸国は、
もっとちゃんと安全保障を脅かすような買収への対抗策を用意している。
例えばアメリカでは、通称「エクソン・フロリオ条項」と呼ばれる制度があって、
これはちょっとまずいんじゃね?という買収は、大統領権限でストップさせられる。





2点目。
日本の土地所有権が絶対的だということ。
この点に関しては、省略します。
「日本は土地収用もまともにできないダメな国だ」
というニュアンスの書き方がしてあって、俺は好きになれない。

土地収用は、今でもやってるし、
無理矢理国民を立ち退かせて山に穴をぶちあけることができるのが、
果たしていい国なのか。
そういう疑問を払拭しきれない。

でも今、
司馬遼太郎の「土地と日本人」という本を読みかけていて、

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司馬遼太郎は、野坂昭如との対談の中で、

成田空港だって、土地を渡すのはいやだといって頑張っている人には、土地に対する思想が小規模ながらあるわけね。買収に行くほうにはない。金で解決できると思っている。思想を持っているおじさんが頑張るのは当たり前だよ。要するに、日本にいちばん欠けているのは、地面に対する思想ですね。野坂さんは変な顔して聞いているけれども(笑)、ぼくはみんなでこの思想を確立することをやらなければ、日本の何もかもが滅亡するんじゃないかと思う。(司馬遼太郎「土地と日本人」)

と言っている。
そのことばに、なんだか深く共感する。
「土地に対する思想」が何なのかはわからないけど、
土地収用ができるできないとか、そういう表面的なことよりずっと大事なことだと思う。





3点目。
日本では、河川など、地表を流れる水に関しては、
水は公共のものであると認識され、その使用や汚染をコントロールする法制度がつくられてきた。
しかし、地下水は、公共のものか個人のものか議論が分かれており、
そのため地下水に関する法律は整備されていない。

法的には土地の所有権について「法令の制限内に於いて其の土地の上下に及ぶ」(民法207条)としていることから、地下水は私有財産とされているが、公水とする判例もでている。現在まで国の各省庁による議論が行われてきたが、定まった・統一された地下水に関する考え方はない。(Wikipedia - 地下水



以上。
興味深いけど、でも内容がちょっと怪しい。
買うほどの本じゃなかった気がする。

2 件のコメント:

Abe-K さんのコメント...

買うほどの本じゃないという感想ながらもちょっと読んでみたくなった。

yung さんのコメント...

なんか、新書なら買いかなって感じなんですよね。1400円は高い。
まあ面白い本ではあります。