2009年8月2日日曜日

Man On Wire

「Man On Wire」を見に行ってきた。
フランス人の大道芸人、フィリップ・プティが、
世界一高いビル(当時)、ワールドトレードセンターのツインビルで綱渡りをする。
17歳の時に新聞記事で「世界一高いビルが建つ」と書いてあるのを見て、
これは綱渡りするしかない、と決意したそうだ。
そんな、バカな天才の物語。

10年近くの間、仲間を集め、WTCへの忍び込み方、ワイヤーを張る方法などを試行錯誤を重ねるその姿は子どものようだった。
犯罪のドキュメンタリーという視点がおもしろかった。
陳腐なハリウッドの犯罪ものを観るより、全然わくわくする。
苦難を乗り越えて綱渡りを成功させる瞬間は、
まるで奇跡を観ている気がした。


でも、たしかにフィリップはカッコいいけど、
この映画はおもしろいけれど、
俺は好きになれなかった。


フィリップが綱渡りを成功させた瞬間は、
つまり、夢が叶った瞬間は、
夢が終わった瞬間でもある。

夢が終わると、
チームにも、
フィリップと恋人にも、
別れが訪れる。
きっと、心をひとつにしていられる目標が達成されてしまったからだ。

もともといろいろケンカもするチームだった。
意見もぜんぜんまとまらない。
バラバラな人たちが、
ひとつのバカな夢の元に集まっていただけ。

「だけ」という言葉がとても切ない。
チームってそんなもんなのか、というもやもやが俺の中には残る。

結果が大事じゃなくて、
プロセスが大事だ。
綱渡りが成功することよりも、
チームの仲がいいことの方を、
俺だったら選ぶかもしれない。


でも、
そういう打算的な選択をできない、
愚直な人間だから心を打つのだろうか。

ひとは選んでなりたい人間になれるわけではない。
フィリップはそういう、折れることができない人間だったんだな、
と思う。
思うしかない。

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