2009年4月25日土曜日

【本】資源を見る眼 現場からの分配論


佐藤仁「資源を見る眼 現場からの分配論」東信堂 2008



こんなに本を読むのはたぶん1回生以来で久しぶりだけど、
昔と違うのは、
新しい知識でも、新しく学ぶというより
再発見する、みたいな感覚を覚える。
3年間ほとんど勉強しなかった気がしたけど、
意外とパズルピースは自分の中に揃っているのかもしれない。

読むのが遅いのは相変わらずだけど。


この本は、研究員をしている先輩から勧められた。
勧められるだけあって、視点がとても鋭い本だった。
開発に関わる人間は、必ず読むべき本だとも言える。

「資源」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。
石油、木材、水、ウラン。
でもここで取り上げられているのは、そういうものではない。
「地域資源」とかいうときの「資源」のニュアンスに近い


そもそも資源とはなんなのか。
この本の中では「働きかけの対象となる可能性の束」と定義されている。
何が資源になるのかは、資源が決めるわけではなく、
あるものに利益になる可能性を見出す、人間が決める。
何が資源かは人間が決めるから、ひとによって何が資源かという認識は違う。
その違いに眼を向けることが大切だ。


例えば、森林。
ただそこにあるだけでは「自然」だが、
それが材木になるという可能性を見出す人にとっては「資源」となる。
そしてそれは材木という「利益」に変わっていく。
しかし、これはたまたまその人が材木としての可能性を見ただけで、
ある人にとっては観光の「資源」だし、
ある人にとっては文化的なアイデンティティだろう。
そういう違いを見ないことには、現地に即した開発は望めない。

近代科学は物体と事象を分けてみようとするが、
「資源」は、可能性を秘めた物体と、それに可能性を見出すという行為が合わさってはじめて「資源」になる。
ときには物体と事象を一体視しないといけない。

みたいなことが書いてある。
この本で取り上げられている「資源」は、ため池とか農地とか、そういうわかりやすいものから「貧しいというアイデンティティ」とかいう、ちょっと考えただけでは思いつかないようなものまで論じられている。

こういう鋭い視点を、俺ももちたいと思った。

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