2009年6月21日日曜日

研究計画書(6/20修正)

さらに書き直してみました。



本研究では、バンコク周辺において、遊水地の土
地利用規制がどのようにマネジメントされているか
に焦点を当てる。

1 背景
洪水災害は (1) 洪水の強度(流量、水位など)、(2)
治水施設の能力(貯水容量、流下量など)、(3) 被害
ポテンシャル(人口密度、建造物など)の 3 要素が
絡み合った社会現象である [1]。近年、気候変動な
どによると考えられる洪水強度の増大や、(3) を低
下させることによる減災効果が実証されてきたこと
を背景として、遊水地政策をはじめとした非構造物
対策に注目が集まってきている。しかしながらその
プラクティスは、特にアジアではまだ少ない。
その中でもタイは、土地のゾーニングに「遊水地」
という区分を設けて土地利用規制を試みている数少
ない国である。モンスーン気候にあって洪水が頻発
するタイで、遊水地による洪水の被害抑制は一定程
度の成功を収めているとされている [2]。

2 概要
上述のようにタイは遊水地確保のための土地利用
規制を行っているが、現実には、人口集中が進む都
市において、土地を使われないままに維持するのは
困難を伴うと考えられる。たとえ法律で規制されて
いても、ガバナンスが不十分であれば使用されてし
まう可能性がある。具体的には (1) スクオッターに
よる違法占拠、(2) デベロッパーによる違法開発、
(3) 土地利用規制の不適切な解除、といった形態が
考えられる。これは治水政策の本旨を損なうもので
あるし、なによりその土地を使用する者自身にとっ
ての不利益につながる。
以上の問題意識を念頭に置きつつ、タイの遊水地
管理の実態に関して主に以下の観点から分析を試み
たい。
• フィールドワークによる遊水地の現地調査
(不法占拠、他の利用形態への転用など)
• 遊水地管理に関する組織体制や法制度の研究
• ガバナンス、住民参加の度合いの測定
• 土地、治水に関する文化の研究

3 目的・意義
遊水地を活用した治水政策は、ヨーロッパを中心
に発展してきた。アジアにも遊水地文化は広くみら
れるが、遊水地を政策として採用している実例は日
本の利根川流域など数える程しかない。従って、遊
水地の活用に注目が集まっているにも関わらず、そ
の管理の実態に関する知見や研究は少ない。この状
況の中で、タイの土地利用規制による治水政策から
学ぶべきものは多いと思われる。
本研究は、タイの治水政策の重要な要素である土
地利用規制を取り上げ、その先進性と課題を明らか
にすることを目的とする。また、遊水地政策にとっ
て重要な要素や観点を考察することも目指してい
る。本研究の成果は、他地域との比較分析を通じ
て、モンスーンアジアに適した治水政策モデルの構
築に寄与するものと期待される。

参考文献
[1] 吉川勝秀「河川流域環境学」技報堂出版 2005
[2] 砂田憲吾ほか「アジアの流域水問題」技報堂出
版 2008
[3] UN World Water Assessment Program, ”Na-
tional Water Development Report: Thailand”
2007

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