2009年7月17日金曜日

【本】差別と日本人


辛 淑玉、野中 広務「差別と日本人」



京都には何かあると思う。

その「何か」の正体はよくわからない。
差別とか、逆差別とか、
右翼とか、左翼とか、
よくわからない、言葉にできないような些細な、でも重大な違和感。

京都市役所に勤めている先輩も、
市政の中に、それが何かわからないけど、でも触れてはならないような何かある。と言っていた。

だから俺は、「日本に京都があってよかった」なんて軽々しくは言えない。
何で?と聞かれてもうまく答えられないけれど、
京都は色んな意味で日本の象徴だからだ。
日本文化の中心地であると同時に、
差別とか偏見とか、陰湿な、いわゆる「日本人」の心の影を感じる。

だいぶ前、中国人とインド人が京都観光をする案内をしていて、京都駅らへんの飲食店に入ろうとすると「中国人はちょっと…」と言われた。
いつの時代だ、と驚くものが、
良きにつけ悪きにつけ、京都には残っている。

でも「京都には残っている」という言い方は、ずるい。
俺だってきっといろいろ差別をしてきたのだろう。
決定的に思い出せる場面はそんなにないけれど、加害者はいつも都合良く忘れる。
京都をみてるとときどき、そんな自分のやな部分をまじまじと突きつけられるようで怖くて、だから京都は嫌いだ。


野中広務は、そんな京都の部落出身の政治家だ。
この本は、辛淑玉が野中にしたインタビューが解説とともにまとめられている。
野中自身が受けてきた差別、その周囲や社会に渦巻く差別。
差別ってこんなにひどいんだ。ダメだよね。みたいなことではなく、
辛と野中との意見のぶつかり合いの中で、差別の本質みたいなものを見つけていこうとする方向性が面白かった。
「日本人と差別」という大げさなタイトルは辛淑玉の勇み足だと思うけれど、
なんとなく「差別」の輪郭が見えたような気がした。


ちなみに、京都では今、この本が売れている。
それはなんか新しい傾向だなーと思った。


追記:
「京都で」って書いたけど、全国で売れてるらしい。
わかりにくい書き方ですいません。。

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