北川達夫、平田オリザ「ニッポンには対話がない—学びとコミュニケーションの再生」三省堂 2008
品格や
武士道よりも
「対話力」。
と帯に書いてあるけど、つまりはそういう本だ。
昔になんて戻れないぜ、夢見てんじゃねーよ。みたいな。
いろんな意味で、日本の国際化が進んでいる。
それは、ビジネスが国際展開するとか、
移民が来るとかだけではなくて、
日本人同士でもいままでのように分かり合ったり察したりできなくなることも含めて。
個人の価値観は多様化していく。
「分かり合おうなんて思ってはいけない」
と2人は言う。
簡単には分かり合えないから
分かり合えない人同士でもコミュニケーションをする力を、
「対話力」を、身につけよう。
というのがこの本の趣旨だ。
別にそれは「察する文化」とか昔からの美徳を捨てる
とかそういうことではない。
察し合える人同士では察し合えばいいけれど、
違う価値観を持った人も日本に増えてくるから、
そういうひととの共生するためには対話が必要になる。
「分かり合おうなんて思ってはいけない」
というのが衝撃的だった。
大人の社会でも学校教育の中でも、「心から分かり合おうとするものでなければほんとうのコミュニケーションとはいえない」「心から分かり合える人間関係をつくりなさい」と教え育てられている。それが実は、子どもたち、若い世代の人たちに相当なプレッシャーを与えてきているのではないか。
と平田オリザは言う。
ほんとにそうだと思う。
俺自身そういうプレッシャーを感じてきたし、
心から分かり合うことができないときには深い挫折を感じた。
コミュニケーションっていうのはそういうことだと思ってきたし、去年「コミュニケーション」っていうテーマでイベントを開いた時も「心から分かり合うコミュニケーション」を想定していた気がする。
みんなが同じ価値観を持っていた古き良き日本。
俺たちはその幻想の中で、現実とのギャップに傷つく。
心に体がついてかない、みたいな感じで。
それでも、傷つきながらも言葉を交わしたい。
ひとはいばらの道を生きている。
分かり合えないひとともコミュニケーションをする、その力を身につけないといけない。
と、差し当たってうちの準教授を前にしたときに強く思う。
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