本間義人「土木国家の思想 - 都市論の系譜」日本経済評論社 1996歴史に「もしも」はない。
それでも、もう少しマシな今があったんじゃないか、という思いはつきない。「もしも」の積み重ねでできてきたこの世界を背負う人間にとっては。
この本は、世界で稀に見る土木国家になった日本の歴史を振り返り、
住宅より土木を、生活より産業を優先する、
そんなのじゃない日本のかたちがあったんじゃないか、
という「もしも」を指摘する。
「鉄のトライアングル」と呼ばれる政・官・財の癒着構造を生み出した、中曽根康弘。
住宅や水道より道路や河川を優先するという「本末論」を唱えた、芳川顕正。
欧米の都市計画を学んで地方自治の重要性を感じつつも、旧「都市計画法」によって中央集権体制をつくりあげてしまった、池田宏。
貧困層のための住宅提供を政策に掲げながら結局は道路に予算を割いた、関一。
土地高騰によって様々な原因を引き起こした日本列島改造論を論じた、田中角栄。
「都市経営」を掲げて神戸の山を削り海を埋め立てた、宮崎辰雄。
けれど、「もしも」を振り返れば振り返るほど、
それは「もしも」ではなくて必然なのだと思えてしまう。
それほどに「土木国家の思想」が一貫としてある。
生活を無視し、民意を無視し、
産業優先で中央集権の、くにのつくり方。
悪い意味での歴史の重みを知った。
それをはねのけるだけの意志の強さが欲しいと思った。
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